第8話 言えなかった言葉

舞台の上で、次の出演者が名前を呼ばれた。
拍手が起こり、黒い幕の隙間から白い照明がこぼれる。私はその光を見たまま、膝の上に置いた歌詞ノートを閉じた。閉じた拍子に、紙の端へ書いた文字が一瞬だけ見えた。
外れたあとに、残る息。
鉛筆で書いたその一行は、まだ少し傾いていた。消しゴムで消そうとして、途中でやめた跡も残っている。きれいではない。けれど、今はその歪みを直す気になれなかった。
隣に座った結衣が、膝の上で手を組んでいる。
手帳を持ってきていた。何年も使っている、角の丸くなった薄い手帳。表紙の隅には、私と一緒に選んだ小さな青いチャームがついている。小学生のころ、駅前の店で買ったものだった。私が海の色だと言い、結衣が空の色だと言った。どちらでもよかった。あの頃は、違う意見が違うまま隣に置けた。
「ひより」
結衣が呼んだ。
私は返事をしなかった。
返事をしないと、結衣はいつもならすぐに次の言葉を探す。けれど今日は、手帳の端を親指で撫でたまま、しばらく黙っていた。
舞台の上では、出演者が歌い始めている。マイクを通った声が体育館の壁に広がり、少し遅れて私たちのいる袖へ戻ってくる。高音の前で、歌い手の息がわずかに揺れた。私はその揺れを聞き分けようとして、途中で耳を閉じた。
今は、他人の声を採点したくなかった。
「なんで、黙るの」
自分の口から出た声は、思ったより低かった。
結衣の指が止まった。
「え?」
「いつもなら、何か言うでしょ」
「言おうとしてる」
「でも、言わない」
「言ったら、またずれる気がして」
私は結衣を見た。
彼女は笑いかけようとした。いつものように、口元が先に明るい形を作りかけた。けれど今度は、その形を自分で崩した。笑いが途中でほどけると、結衣の顔には、何をしていいのかわからない人間の輪郭が残った。
「ずれるって、何が」
「ひよりが欲しいものと、私が渡すもの」
「私が欲しいものなんて、結衣にわかるの」
「わからない」
答えが早かった。
いつもの結衣なら、ここで「でも、たぶん」と続ける。曖昧さを埋めるための言葉を、いくつも重ねる。けれど今日は、ひとつの答えを置いたままにした。
「わからないから、言わないほうがいいと思った。今までみたいに、ひよりが落ち込んでるからって、明るくして、甘いもの買って、別の話をして。それでひよりが少しでも普通に戻るなら、それでいいと思ってた。でも、あれはひよりを戻してたんじゃなくて、私が安心したかっただけかもしれない」
舞台の上で、歌が一度途切れた。
歌い手が入りを間違えたのか、伴奏が遅れたのかはわからない。観客の間に短いざわめきが生まれ、すぐに拍手が重なった。歌は続いている。
私はその音を聞きながら、結衣の横顔を見ていた。
「私が落ちた日に、次があるって言ったよね」
「うん」
「合唱コンクールもあるし、文化祭はステージだけじゃないって」
「うん」
「私、あれが嫌だった」
「知ってる」
「知ってたのに、言ったの」
「知ってたから、言った」
結衣は手帳を開いた。中には文化祭の予定や、クラスの役割分担が細かな字で書かれている。余白には、買い出しの店の名前、必要な画用紙の枚数、誰が何時に来るかが並んでいた。誰かのために動くことは、結衣にとって呼吸と同じだった。動いていれば、取り残されずに済む。動かしていれば、誰かが落ちずに済む。
「ひよりがあの掲示板の前で、何も言わなくなったとき、私は怖かった。落ちたことが悔しいのはわかってた。だけど、あんなに静かなひよりを見たことがなかったから。小さい頃から、ひよりは歌う前になると喉を押さえてた。声が出ないときも、家に帰ってから何度も練習してた。途中でやめても、次の日にはまた歌ってた。だから、今回もそうだと思った。少し休めば、また歌える。別の場所で歌えばいい。そんなふうに、私が勝手に道を作った」
「私の道じゃないのに」
「うん」
「私がどこへ行くか、決めてないのに」
「うん」
結衣は頷いた。二度目の頷きは、ひどく遅かった。
「でも、決めてほしかった。ひよりが歌うって。歌う場所を探すって。私がそう思っていれば、ひよりも戻ってくる気がしたから」
「私が歌うかどうかも、結衣に決めてほしかったの?」
「違う。決めたかったのは、ひよりじゃなくて、私のほう」
結衣の声が、そこで初めて震えた。
「ひよりが歌わないって言ったら、私は何をすればいいの。何もしてあげられない。隣にいるだけでいいって思えればいいのに、私はそれができない。隣にいるだけだと、ひよりが沈んでいくのを見ているみたいで、怖くなる。だから言葉を足して、予定を足して、明日の話をして。そうしたら、ひよりが今日から逃げられると思ってた」
私はノートを膝の上で押さえた。
「逃げたかったわけじゃない」
「うん」
「逃げられなかっただけ」
「うん」
「落ちたことを、ちゃんと落ちたままにしておきたかった」
「……それは、わからなかった」
結衣は顔を上げた。
「落ちたままにしておきたいって、どういうこと?」
「わからない」
「ひよりも?」
「わからない。でも、次へ行こうとすると、落ちたことがなくなる気がした。なかったことにされるみたいで嫌だった。頑張ったねとか、次があるよとか、まだできるよとか、そういう言葉を重ねられると、落ちた私だけが間違ってるみたいになる。みんなはもう前を向いてるのに、私だけがそこに残ってるから、遅れてるみたいに思えてくる」
「遅れてないよ」
結衣の声が強くなった。
「遅れてない。私が先に行きたがっただけ。ひよりがまだそこにいるのに、私が勝手に次の場所へ連れていこうとした。だから、ひよりが黙るのは、私が嫌われたからだと思ってた。私のことをもう必要としてないから、何も話してくれないんだと思ってた」
「そんなことは……」
言いかけて、言葉が止まった。
必要としていないわけではない。けれど、必要だから何でもしてほしいわけでもない。結衣が近くにいることと、結衣が私の代わりに痛みを処理することは、別のことだった。
「私、結衣に怒ってる」
「うん」
「でも、結衣がいないと、たぶんもっと困る」
結衣は目を瞬いた。
「困る?」
「困る。帰り道にひとりでいると、考えなくていいことまで考えるから。誰かに勝ちたかったとか、選ばれたかったとか、褒められたかったとか。そういうのを、自分だけで考えると、全部嫌になる。でも、結衣がいると、結衣に腹を立てたり、結衣の言葉に反発したりできる。だから、まだ自分が何を思ってるのか、少しわかる」
「それ、支えになってるのか、嫌われてるのか、どっち?」
「どっちも」
結衣は、今度こそ笑った。
大きな笑いではなかった。喉の奥で、こぼれそうになった息がひとつ形を変えた程度の笑いだった。それでも、さっきまでの作った明るさとは違っていた。笑って空気を変えようとするのではなく、笑ってしまった自分をそのまま受け入れているように見えた。
「ひよりって、そういうこと言うんだね」
「言わないだけで、思ってる」
「知ってる。知ってたけど、言わないから、私が勝手に決めてた」
「私も、結衣が勝手に決めてるって思ってた」
「決めてたよ」
「認めるんだ」
「認める。私、ひよりのこと、ずっとわかってるつもりだった。声を出す前に喉を押さえることも、歌い終わるとすぐ譜面を見ることも、褒められると目を逸らすことも知ってる。だから、ひよりが何を欲しいかもわかると思ってた。でも、知ってることと、わかることは違うんだね」
私は手帳の表紙に触れた。
青いチャームが、指先に当たって小さく揺れた。
「私も、結衣のことを知ってると思ってた」
「私のこと?」
「沈黙が嫌いで、誰かが泣きそうになると、すぐ笑う。場を明るくして、誰もひとりにしない。それだけだと思ってた」
「それだけじゃないよ」
「うん。今日、少しわかった」
結衣は目を逸らした。舞台の音が、幕の隙間から細く差し込んでいる。歌い手はまだ歌っていた。さっきの失敗を取り戻そうとしているのか、声の入りが少し慎重になっている。それでも、声は止まらない。
「私ね、中学のとき、別の子にも同じことをしたことがある」
結衣は手帳を閉じた。
「その子、部活で失敗して、ずっと黙ってた。私は何か言わなきゃと思って、冗談を言って、みんなを呼んで、普通に戻そうとした。そしたら、その子が帰りに泣いた。私に、普通に戻したいのは自分でしょって言った。つらいままの私を見ていられないだけでしょって」
私は結衣を見た。
「それで?」
「何も言い返せなかった。図星だったから。私はその子を助けたかったんじゃなくて、泣いてる人の隣にいる自分が嫌だった。何もできない自分が、役に立たないみたいに思えて怖かった」
結衣の指先が、手帳の表紙を強く押さえた。
「だから、ひよりにも同じことをしてた。ひよりが笑えるようになれば、私も安心できる。ひよりがまた歌えば、私が何か間違えたことにならない。そう思ってた。ごめん」
「謝らないで」
「でも、これは謝らないといけない」
「謝られると、私が許すかどうかを決めなきゃいけなくなる」
「許さなくていいよ」
結衣はまっすぐ私を見た。
「今すぐ許さなくていい。私が悪かったことを、ひよりが受け止めて、きれいに終わらせてくれなくていい。私、謝ったあとにひよりが笑ってくれることまで期待してたのかもしれない。ごめんって言えば、ひよりが大丈夫って言ってくれて、また前みたいに戻れると思ってた。でも、戻らなくていいんだよね。戻るんじゃなくて、違うところから始めればいい」
その言葉の最後で、結衣の声が掠れた。
私は、結衣の目の下に残る赤みを見た。泣いたのかもしれない。泣いていないのかもしれない。けれど、今までなら隠そうとしたはずの顔を、彼女は隠さずにいた。
「私も、ごめん」
言うと、結衣が少し眉を寄せた。
「ひよりが謝ることじゃないよ」
「結衣を遠ざけた」
「遠ざけられた」
「同じじゃない?」
「同じじゃないよ。ひよりは傷ついてた。私は怖がってた。どっちも本当だけど、同じ形じゃない」
結衣は、机の端へ手帳を置いた。
「でも、ひよりが私に言ってくれてよかった。怒ってるって。困るって。そんなふうに言ってくれると思わなかったから、私、また勝手にわかったつもりになるところだった」
「言うの、苦手だから」
「知ってる」
「知ってるなら、急かさないで」
「うん」
「返事を急がせないで。私、考えてる途中で答えを求められると、適当に頷くしかなくなるから」
「うん」
「でも、何も聞かないでほしいわけじゃない。聞いてほしいときもある」
「それは、どうやって見分けるの」
「私にもわからない」
「またそれ?」
「わからないものは、わからない」
結衣は、しばらく考えるように黙った。以前なら、この沈黙に耐えられず、何かを言っていたはずだ。けれど、彼女は口を閉じたまま、私の返事を待った。
舞台の上の歌が終わった。
拍手が広がり、体育館の床が細かく震える。誰かが袖へ戻ってくる足音。黒い幕の向こうで、実行委員が次の準備を始めている。マイクスタンドを移動する金属音が、二度、三度鳴った。

「今は?」
結衣が訊いた。
「何が」
「聞いてほしいとき? それとも、何も聞かないでほしいとき?」
私は、結衣の手帳を見た。表紙の青いチャームが、舞台の明かりを受けてかすかに光っている。
「今は、少しだけ聞いてほしい」
「うん」
「でも、答えは出さなくていい」
「うん」
私は息を吸った。
喉の奥に、まだ薄い膜が残っている。けれど、さっきまでのように、そこへ指を押し当てて固さを確かめようとは思わなかった。固いなら固いまま、声が出る場所を探せばいい。そう思えるほどには、少しだけ身体が戻ってきていた。
「私、歌うことが好きだったんだと思う」
結衣は何も言わなかった。
「だった、っていうのは、今も好きかどうかわからないから。でも、小学生のときにあの曲を聴いたときは、誰かに褒められたいとか、選ばれたいとか、そういうことを考えてなかった。歌い手が音を外して、それでも続けたのが好きだった。きれいじゃないのに、そこに人がいる感じがした」
結衣の手が、手帳の上でゆっくり開いた。
「ひよりは、昔からそういうの好きだったよね。きれいに揃ってるものより、少し変なところを見つけると、ずっと覚えてる。小学校の合唱でも、みんなが同じ声で歌ってるのに、ひとりだけ入りが遅れた子のこと、ずっと気にしてた」
「覚えてない」
「覚えてるよ。帰り道に、あの子の声だけ残ってたって言ってた」
私は目を伏せた。
そんなことを言った気もする。けれど、それは歌う理由としてはあまりに小さく、誰かに話すほどのものではないと思っていた。もっと立派な理由が必要だと思っていた。歌が好きだから、では足りない。人を感動させたい。何かを伝えたい。選ばれるだけの力がある。
そういう言葉を、あとから貼りつけていた。
「私、歌を大きくしようとしてた」
「大きく?」
「声量とか、響きとかじゃなくて。歌う理由を、大きなものにしようとしてた。誰かの心を動かすとか、認められるとか、そういうの。そうじゃないと、落ちたときに何も残らない気がしたから」
「でも、残ってたんだね」
「うん」
「何が?」
「外れた音」
私は舞台のほうを見た。さっきの歌い手は、もう舞台を下りている。照明の中央には誰もいない。けれど、歌が終わったあとの空気だけが、そこに薄く残っていた。
「外れたあとに、続いた声。私は、それを残したいのかもしれない。上手く歌えた声じゃなくて、怖くて、息が詰まって、それでも次の音を探した声」
結衣は、少しだけ笑った。
「それ、ひよりの声じゃん」
「まだ、そう思えない」
「でも、今、言葉にした」
「言葉にしただけ」
「言葉にしたのは、歌う前より大きいよ」
私は結衣を見た。
「そういうところ」
「何が」
「すぐ、きれいにまとめる」
「あ」
結衣は口を閉じた。けれど、今度は自分から笑いを消そうとはしなかった。失敗した顔のまま、肩をすくめる。
「ごめん。今のは、まとめたくなった」
「うん」
「でも、聞いたことは本当」
「それならいい」
「ひよりが歌う理由、私が決めない」
「うん」
「ひよりが歌わない理由も、私が決めない」
「うん」
「でも、歌いたくなったら、隣にいる」
私は答えなかった。
結衣は少し待ってから、机の上へ手を置いた。指先が私の手に触れるほど近くはない。けれど、手帳と私のノートの間に、逃げ道を残した位置だった。
「触ってもいい?」
思いがけない問いに、私は結衣を見た。
「何を」
「手。嫌ならいい」
以前の結衣なら、もう手を握っていた。肩を叩いて、笑って、いつもの距離へ戻そうとしていた。けれど今は、触れる前に尋ねている。
私は、自分の手を机の上へ出した。
結衣の指が、少しだけためらってから、私の手の甲へ重なる。温度は高くなかった。緊張しているのか、指先がわずかに冷えている。二人の手のあいだに、古い紙と海風の匂いが残った。
「冷たい」
「結衣の手も」
「私、緊張してるから」
「何に」
「ひよりに嫌われること」
「嫌ってない」
「でも、怒ってる」
「怒ってる」
「それは、嫌いとは違う?」
「違う」
「よかった」
結衣の指が、ほんの少しだけ強くなった。
「私、ひよりに怒られるの、たぶん必要だった」
「必要?」
「うん。怒られないようにしてると、ずっと正しいふりをするから。私が気を遣えてるふりも、ひよりが平気なふりも、どっちも続けてたら、いつか本当に何も言えなくなる」
私は手を引かなかった。
舞台の上では、次の出演者の準備が進んでいる。誰かがマイクへ息を吹き込み、スピーカーが低く唸った。照明が一度落ち、また白く灯る。
「結衣」
「なに」
「今日、帰りに海のほう歩きたい」
「うん」
「でも、蒼司がいるかもしれない」
「いたら?」
「わからない」
「じゃあ、いたら考えよう」
「結衣が、考えずに決めないの珍しい」
「私だって、少しは変わるよ」
「少しだけ?」
「今のところは」
私は、笑おうとした。
頬が固まりかけた。けれど今度は、その不自然さを隠そうとしなかった。結衣がこちらを見て、笑った。笑いを返したというより、私の失敗した表情をそのまま受け取ったような笑いだった。
舞台の上から、次の名前が呼ばれる。
客席の拍手が始まる。
私は結衣の手から自分の手を離した。代わりに、机の上の歌詞ノートを開く。鉛筆で書いた一行が、さっきよりはっきり見えた。
外れたあとに、残る息。
その下へ、もう一行を書き足す。
ひとりでなくても、自分の声で。
書き終えると、私はノートを結衣のほうへ向けた。
結衣は読んだ。すぐには褒めなかった。大きく頷くこともしなかった。ただ、文字の上へ指を置かず、少し離れた場所から見ていた。
「これ、歌詞?」
「まだ違う」
「じゃあ、何?」
「わからない」
「そっか」
結衣は、それ以上聞かなかった。
その沈黙は、以前なら耐えられないものだった。けれど今は、言葉を急かさずに置いておける余白のように感じた。体育館の遠い歌声と、誰かの足音と、海風に揺れる青い紙片の擦れる音。その全部が、私たちの間を通り過ぎていく。
やがて結衣が、手帳を閉じた。
「ひより」
「なに」
「ごめん」
私はノートから目を上げた。
結衣は、もう一度言った。
「今度は、ひよりに許してもらうためじゃなくて。私が、ひよりの痛いところを明るさで隠そうとしたことを、忘れないために言ってる」
私はすぐには答えなかった。
答えたら、何かが決まってしまう気がした。許すとか、許さないとか。戻るとか、戻らないとか。けれど、決めなくても、ここにいることはできる。
私は結衣の手帳の端を、指先で軽く押した。
「忘れないで」
「うん」
「私も、忘れない」
「何を?」
「結衣が、怖かったこと」
結衣の目が揺れた。
「それ、覚えなくていいのに」
「覚える。結衣だけが、私を見てたみたいに言うから。私も、結衣のこと見てるって、言っておきたい」
結衣は俯いた。
笑ったのか、泣きそうになったのか、私にはわからなかった。ただ、彼女の肩が一度だけ上下した。息を吸って、ゆっくり吐いたのだと思う。
幕の向こうで、新しい歌が始まった。
最初の音は、少し震えていた。
それでも、次の音が来る。声は揺れたまま、照明の下へ伸びていく。体育館の高い天井に触れ、反響し、私たちのいる袖へ戻ってくる。
私はその声を聴きながら、ポケットの中の片方だけのイヤホンへ触れた。
蒼司の声は、まだ耳の奥に残っている。
自分の声は、まだ見つからない。
けれど、探していることを、もう一人で隠しておく必要はなかった。
← 横にスクロールして読み進められます
