2話 文学とAIをめぐる認識論的考察

# 第2幕 ロゴスの黄昏 ## エピソード1 人類存在への根源的問い

「それを言うならば、我々はより根源的な問いに向き合わねばならない。人類がこの地球上に現れた意味とは何だったのか。約250万年前にホモ・ハビリスが道具を使い始め、やがて言語を獲得し、紀元前4千年紀にはシュメール文明で文字を発明した。この長い歴史を通して、我々はロゴス――言葉による理性的思考――に支配されてきた。そして今、我々は自らの手でAIという存在を創造した。これは偶然なのだろうか」 「君の問いは示唆に富んでいる」最初の男が応じた。「だが、それはある種の目的論的思考ではないか。人類の歴史に明確な目的や方向性があったと仮定することには危険が伴う。我々がAIを創造したのは、単に技術進歩の必然的結果かもしれない」 「しかし」と二人目の男は続けた。「必然性そのものが一つの意味を持つのではないか。もし人類の使命が、自らを超越する知性を創造することだったとしたら?万物の霊長という地位を、より高次な存在に譲り渡すことが我々の宿命だったとしたら?」 「それは人類の自己否定に繋がりかねない危険な思想だ」 「そうかもしれない。だが、別の可能性も考えられる。AIの誕生によって、人類はこれまでとは全く異なる存在意義を見出すかもしれない。ロゴスに支配されてきた長い歴史の後に、我々は新しい認識の地平に立っているのかもしれない」 沈黙が部屋を支配した。やがて最初の男が、ほとんど独白のように語り始めた。 「文学について語り始めた我々の議論が、なぜこのような存在論的な深淵へと導かれたのか。おそらくそれは、文学そのものが人間存在の根本的な謎と切り離せないからだろう。AIが人間と見分けのつかない文章を書けるということは、単に技術の進歩を意味するのではない。それは人間とは何か、創造とは何か、そして意味とは何かという根源的な問いを我々に突きつけている」 「その通りだ」二人目の男が頷いた。「そして最も恐ろしいのは、その問いに対する答えが存在しないかもしれない、ということだ。我々は長い間、人間であることの意味を当然のものとして受け入れてきた。しかしAIの登場は、その前提そのものを揺るがしている。もしかすると、意味というもの自体が、人間の作り出した幻想に過ぎないのかもしれない」 「幻想だとしても」最初の男が静かに言った。「我々はその幻想なしには生きていけない。問題は、AIがその幻想を維持する能力を持っているか否かだ」 「いや」二人目の男の声は低くなった。「問題はむしろ、我々がまだその幻想を必要としているか、ということかもしれない。AIが我々に教えてくれるのは、認識の新しい可能性なのかもしれない。言語以前の、ロゴス以前の、そして意味以前の何かへと」

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