7話 足跡の向き

夜の旧県立南星高校は、昼間よりも静かだった。

校門を閉める金属音が遠くで響き、そのあとに残ったのは、風が校舎の角を回る音だけだった。取り壊し業者の養生シートが窓の外でたるみ、風が来るたび、湿った布が壁を撫でるような音を立てている。白い膜の向こうに校庭があるはずなのに、街灯の光も、裸になりかけた銀杏の枝も見えない。

美術室の床に、細い足跡が残っていた。

白いチョークの粉を踏んだ跡だった。

粉そのものは明るいのに、足跡の縁だけが暗く沈んで見える。靴底の溝へ粉が入り込み、歩いた人間の重さに押し固められていた。誰かが急いで通り、扉の前で一度止まり、そこで向きを変えている。

私はしゃがみ込み、床へ顔を近づけた。

冷気が膝から上がってくる。粉っぽい匂いが鼻の奥に残り、指先を床へ伸ばしたくなったが、触れずに堪えた。粉の粒がどこから飛び、どこで途切れたか。その形を壊したくなかった。

「まだ触らないで」

廊下の先から、桐生先生の声がした。

先生は懐中電灯を低く構えたまま立っていた。光は強すぎず、壁の汚れや剥がれかけた掲示物を、見落とせない程度にだけ浮かび上がらせている。懐中電灯の筒を持つ手には、薄い灰色の手袋があった。

「触っていません」

「見ているだけ?」

「はい」

「なら、見たことを順番に言って」

私は床から目を離さなかった。

「美術室の扉から廊下へ向かって、粉が細く続いています。扉の前より、三歩目のあたりが濃い。そこで靴を一度引いている。足跡の幅は、業者の安全靴より狭いです」

「ほかには?」

「戻っていません。少なくとも、同じ足跡が美術室へ向かう形では残っていない」

「つまり?」

「ここへ来た人と、ここから出た人が同じとは限らない」

先生はすぐに返事をしなかった。懐中電灯の光が床をゆっくり滑り、白い粉の濃淡を拾っていく。

「足跡だけで、そこまで言える?」

「言えません。でも、粉の飛び方が違います。こちらは靴底が乾いている。向こうは少し湿っている。外から入った足跡なら、同じ方向へ続くはずなのに、廊下の途中で消えている」

「誰かが掃除した可能性は?」

「あります」

「業者が?」

「作業記録では、この棟の作業は三時前に終わっています」

「見回りの人が?」

「見回りなら、粉を避けて歩くと思います。これは避けていない。むしろ、粉の上を通っている」

先生は懐中電灯を下げた。

「人は、急いでいるときほど、足元を見ないものよ」

「でも、この人は途中で止まっています」

「何のために?」

問いが廊下の冷気へ落ちた。

私は足跡の先へ視線を移した。粉は美術室の扉から壁際へ伸び、途中で薄くなっていた。廊下の窓の下にある古い掲示板の前で、わずかに濃くなり、その先は西側の階段へ向かっている。

掲示板には、閉校記念行事の案内が貼られていた。上から新しい紙を重ねているが、端の剥がれた部分から、古い文化祭の文字が覗いている。

「こっちです」

私は立ち上がった。

「まだ触らないで」

「触りません。足跡の向きを見ます」

先生は一度だけ私の顔を見た。それから、何も言わずに頷いた。

私たちは廊下を進んだ。

夜の校舎では、昼間なら聞き流してしまう音が、ひとつずつ輪郭を持っていた。木の床が体重を受けて軋む音。遠くの配管を水が通る音。養生シートが窓枠を擦る、ざらついた音。歩くたび、靴底の下でチョークの粉がかすかに鳴った。

窓枠から伝わる冷気が、指先まで届く。私は手をポケットへ入れた。ポケットの中には、朱音のものかもしれない紙片の複写があった。紙そのものは久我山さんに預けている。けれど、写し取った「八時に、戻る」という文字だけは、何度見ても消えなかった。

廊下の角で、足跡が一度途切れた。

私は立ち止まった。

「ここです」

粉の上に、靴底の後半だけが残っている。つま先が北を向き、踵が南へずれていた。歩き出そうとして、やめたような形だった。

「向きを変えた?」

先生が尋ねた。

「はい。最初は南へ行こうとして、途中で北へ向き直っています」

「何か見つけたのかしら」

「あるいは、見つけられたくないものを避けた」

先生は壁際へ光を向けた。古い掲示板の下に、養生資材を入れた木箱が寄せられている。木箱の蓋には、白い粉が薄く積もっていた。蓋の端だけが、最近動かされたように粉を失っている。

そのとき、先生が息を吸った。

「透子、床じゃなくて箱を見て」

私は光の輪の中へ顔を近づけた。

木箱の側面に、細い傷がある。線が三本、そのあとに二つの点。配置図の補助記号と同じ形だった。傷は古く、木肌の色も周囲と変わらない。けれど、その上に新しい埃が積もっていない。誰かが最近、布か袖で擦ったように見えた。

「記号です」

「決めるのはまだ早いわ」

「でも、配置図の線と同じです」

「まず全体を撮る。箱の位置、周囲の床、傷の高さ。手袋を替えて」

先生は鞄から薄い保存用手袋を取り出し、私へ渡した。私は言われた通りに手袋をはめ、スマートフォンで順番に撮影した。写真を撮るたび、シャッターの音が廊下に跳ね返る。

木箱の下には、折れたイーゼルの脚と、展示用の金具が見えていた。蓋を開ければ中身を確認できる。だが、開ける前に、先生は箱の周囲を一周した。

「誰かがここへ来て、箱を動かした。でも、持ち去るためではない」

「どうしてですか」

「床の粉を見て。箱の前だけ、足跡が濃い。箱を引きずったなら、底の線が残るはず。でも残っていない。持ち上げて、少しずらした」

「何かを入れた?」

「入れたか、取り出したか。向きが問題ね」

先生は箱の正面を見た。記号の傷は、階段ではなく、美術室の方向を向いていた。

「これは案内です」

私は言った。

「何の?」

「ここに何かあるという案内。作品の右端にあった鈍い朱と同じです。見る人を、次の場所へ送っている」

「案内を作った人が、見つけてほしいと思っていたなら、なぜこんな場所に隠すのかしら」

「見つけてほしい相手が、誰でもよかったわけじゃないからです」

「誰か一人を選んでいた?」

「あるいは、選べる人だけに」

先生は私を見た。その視線には、肯定も否定もなかった。ただ、私が自分の言葉の重さを持てるかどうかを確かめるような静けさがあった。

私は箱の蓋へ手を伸ばした。

「写真は撮りました」

「状態も記録した?」

「位置、向き、記号の高さ、足跡の濃さ」

「なら、開けるわ」

蓋を持ち上げると、古い金属の匂いが立ち上った。中には、錆びたフック、折れたイーゼルの脚、色の抜けた布、針金の束が入っている。底に一枚だけ、厚手の白い紙があった。

私は紙の端をつまんだ。

赤い染みがある。

血ではなく、絵具だとすぐに分かった。乾いた赤の膜が紙の繊維へ染み込み、折り目の内側だけが黒ずんでいる。紙は何度も折られ、開かれたらしい。端に群青色の線があり、その中央へ、三つの点が並んでいた。

私は息を止めた。

「これは……」

先生の指先が、紙の上で止まる。

「展示配置図の切れ端ね」

紙の端に、かすれた文字が残っていた。

――八時に、戻る。

その文字を見た瞬間、保管庫の制作ノートが頭に浮かんだ。消し跡の下に残っていた「西棟三階」と「戻る」。同じ言葉が、別の紙に、別の手つきで残されている。

「朱音さんが書いたんでしょうか」

「筆跡を比べる必要がある」

「でも、ここへ戻るつもりだった」

「そう読めるわね」

「戻れなかった?」

先生は紙片を見つめたまま、すぐには答えなかった。

廊下の向こうで、窓が鳴った。養生シートが風に押され、校舎全体が一度だけ息をついたように揺れる。紙片の赤い染みが、白い照明の下でひどく鮮やかに見えた。

「透子。ここで決めつけないで」

「決めつけていません。ただ、午後八時にここへ来る人がいて、その人が戻ると言い残して、記録から消えた。そう考えるしかないところまで来ています」

「考えることと、断定することは別よ」

「じゃあ、何を見ればいいんですか」

声が自分の思っていたより大きくなった。誰もいない廊下へ、声だけが先に走っていく。

「朱音さんの名前は名簿にある。作品には姿が残っている。配置図には、誰かが戻る場所が書かれている。それなのに、みんな名前だけを見て、そこにいた人のことを見ない。失踪したのか、追い出されたのか、どこへ行ったのかも確かめないまま、欠席とか家出とか、扱いやすい言葉にしている」

先生は私を見た。

「あなたは、朱音さんを救いたいのね」

「もう二十年前のことです」

「時間は、救いたいという気持ちを消してくれないことがあるわ」

「でも、私には何もできません。戻れない。聞けない。本人が何を考えていたのかも分からない」

「分からないから、残されたものを読む。けれど、読んだものを自分の物語にしてはいけない。朱音さんが残したものは、あなたを主人公にするためではないわ」

その言葉は、冷えた金属のように胸へ入った。

私は紙片を見た。折り目の周囲は毛羽立ち、赤い絵具の膜が細かく割れている。何度も折り直し、開き直した人の指先が残した傷だった。助けを求めたいのに、その紙を見られることさえ怖かったのかもしれない。紙の上だけで、近づきたい気持ちと隠れたい気持ちがぶつかっている。

「それでも、見つけた人には責任があると思います」

「責任?」

「見つけたのに、また元の場所へ戻して、なかったことにする責任です」

先生の目が、わずかに細くなった。

「それは責任ではなく、再び沈黙に加わることよ」

「じゃあ、私はどうすればいいんですか」

「記録する。誰のものか分からないなら、分からないまま残す。いつ、どこで、どんな状態で見つかったかを書く。そうすれば、次に見る人が、あなたの記憶だけに頼らずに済む」

先生は紙片を私へ差し出した。

「救うという言葉は、時々、救われる側から声を奪う。あなたができるのは、朱音さんの代わりに話すことではなく、朱音さんが残した声を、これ以上歪めないこと」

私は紙片を受け取った。厚手の紙は冷たく、折り目だけが指に引っかかった。

そのとき、階段の下から靴音が聞こえた。

一つ。

間を置いて、もう一つ。

私と先生は同時に振り返った。

白い養生シートの向こうから、誰かが廊下へ上がってくる。顔は見えない。靴底がチョークの粉を踏み、しゃり、と鳴った。人影は踊り場で止まり、こちらを見上げた。

私は反射的に紙片を握りしめた。

けれど先生が、私の手首を静かに押さえた。

「強く持たないで。紙が傷む」

その声に促され、私は指の力を抜いた。

人影は、廊下の手前で立ち止まっていた。養生シートに遮られ、輪郭だけがぼやけている。背は高くない。肩がわずかに内側へ入り、こちらを見ているのか、掲示板を見ているのかも分からなかった。

先生が一歩、光を向けた。

人影は身を引いた。

次の瞬間、足音が階段を下りていく。急いでいるのに、走らない。靴底が粉を踏む音だけが、一定の間隔で遠ざかっていった。

「追いますか」

私は言った。

「追わない」

「でも、今の人が紙を置いたのかもしれません」

「かもしれない。けれど、今ここを離れれば、紙片と足跡の状態を失う」

「逃げられます」

「人は、逃げるときに必ず遠くへ行くとは限らないわ。記録を残しておけば、次に見つけられる」

先生はそう言い、足跡へ光を戻した。

人影が立っていた場所に、新しい跡が重なっている。古い粉の上に、靴底の角が一度だけ押しつけられていた。そこから、階段へ向かう足跡が続いている。

私は跡を見ながら、妙な既視感に襲われた。

誰かが急いで通り、立ち止まり、向きを変える。戻ろうとして、戻れず、別の方向へ行く。朱音の紙片にある「戻る」という言葉が、場所ではなく、人の迷いそのものを指しているように思えた。

美術室へ戻る道で、私は一度だけ振り返った。

廊下の先に、誰もいない。養生シートだけが窓枠に貼りつき、白い面を震わせている。その向こうに、校庭の街灯がぼんやり滲んでいた。

机へ戻ると、先生は保存用の中性紙を広げた。私は紙片をその上へ置き、発見時刻と場所を書き始めた。

西棟三階、廊下。午後八時四十九分。木箱の底。紙片一枚。赤い絵具の染み。群青色の記号。新しい足跡あり。

ペン先が止まった。

「先生。足跡の主は、書きますか」

「確認できないことは、確認できないまま」

「人影を見たことは?」

「見た。顔は確認できなかった。身長も、服装も、断定できない」

「それでも、見たことは残すんですね」

「見たことを消す理由はないわ」

私はその言葉を記録へ加えた。

紙片の隣に、足跡の向きを簡単な線で示す。美術室から廊下へ。掲示板の前で北へ。階段の踊り場で停止。再び下へ。

その線を見ているうちに、別のことに気づいた。

「先生。この足跡、最初の向きと最後の向きが違います」

「ええ」

「人影は、美術室から来たんじゃない。少なくとも、最初から美術室へ向かっていたわけではない」

「どういうこと?」

「足跡の重さが、廊下の途中で変わっています。最初はつま先が強い。急いで進んでいる。でも、掲示板の前で踵が強くなり、向きを変えた。ここへ何かを置くために来たのではなく、置いたものを取り戻すために来て、やめたように見えます」

先生は記録用紙を覗き込んだ。

「取り戻すために来たのに、紙を残した?」

「取り戻そうとして、誰かに見つかるのを恐れた。だから、途中で戻った」

「それなら、紙を置いた人と、さっきの人影は同じとは限らない」

「はい」

私は紙片へ目を戻した。

誰かが残した。誰かが見つけた。誰かが戻そうとした。今夜、この廊下を歩いた人間は一人ではないのかもしれない。けれど、足跡には名前がない。記録は人を呼び戻すことができても、誰が踏んだかまでは自分から語らない。

「透子」

先生の声がした。

「あなたは今、誰を追っているの?」

「朱音さんです」

「違うわ」

私は先生を見た。

「あなたが追っているのは、人影ではない。二十年前に止まってしまった時間の継ぎ目よ。だから、足跡の向きにこだわっている」

否定しようとして、できなかった。

踊り場の濃い粉。踏み出せなかった足。戻るために向きを変えた跡。その一つ一つが、過去の誰かの身体に似ていた。どこへ行けばいいのか分からず、誰にも声をかけられず、ただ立ち止まっていた身体。

先生は紙片を封筒へ入れ、口を閉じずに置いた。

「明日、久我山さんにこの足跡のことを伝えましょう。人影を見たことも含めて」

「小野寺さんが、資料を処分しようとしているかもしれません」

「だからこそ、あなた一人で抱えないこと。証拠を守るために、証拠を独占してはいけないわ」

「でも、誰かがまた消すかもしれない」

「消される前に、複数の場所へ残す。原物、写真、記録。ひとつが失われても、全部は失われないようにする。それが保存よ」

先生は懐中電灯を消した。

暗がりの中で、養生シートの向こうの街灯だけが、白い膜を薄く照らしている。美術室の石膏像は輪郭を失い、窓のほうを向いた顔だけが、灰色に浮かんでいた。

私は紙片を見つめた。

――八時に、戻る。

それは待ち合わせの言葉ではなく、戻れなかった人間のために残された、最後の方向だったのかもしれない。場所を示し、時間を示し、けれど誰が戻るのかだけは書かれていない。

名前を持たない合図。

誰かが遅れて読み、誰かが遅れて歩くための、白い余白。

「先生」

「なに」

「もし、朱音さんが本当にここへ戻ろうとしていたなら、誰かは待っていたんでしょうか」

先生はすぐには答えなかった。

窓の外で、養生シートが膨らみ、また壁へ貼りつく。湿った布の音が、呼吸のように続いている。

「待つことと、迎えに行くことは違うわ」

「同じではないですか」

「違う。待つのは、自分の場所を動かずにいること。迎えに行くのは、相手のいる場所まで自分が動くこと。あの夜、誰かが待っていたとしても、それだけでは朱音さんを救えなかった」

「どうして、誰も迎えに行かなかったんでしょう」

「怖かったからでしょうね。騒ぎになるのが。自分まで責められるのが。誰かの側に立ったことで、今いる場所を失うのが」

「それは、守ることとは違います」

「ええ」

先生の声は、暗がりの中でかすかに響いた。

「守るという言葉は、時々、自分が動かないための理由になる。相手のためだと言えば、黙っていることも、見送ることも、きれいに見えるから。でも、動かなかった事実は、どんな言葉を重ねても消えない」

私はその言葉を聞きながら、母の姿を思い出した。私の襟を直し、袖口のほつれを切り、帰り道だけを心配する母。生活の細部を守る手つきの中に、あの夜から続く何かを閉じ込めている。

守るために黙った。

けれど、黙ったことで、誰かを置き去りにした。

その二つは、同時に成り立つのだろうか。

私はすぐに答えを出せなかった。答えを急げば、また何かを一色で塗りつぶしてしまう気がした。

美術室を出る前に、私は床の足跡をもう一度見た。

白い粉の上に残った暗い縁。途中で止まり、向きを変えた跡。誰かが立ち止まった場所には、粉がわずかに深く沈んでいる。

私はその場所を、指でなぞらなかった。

代わりに、記録用紙の余白へ、足跡の向きをもう一度描いた。

美術室から廊下へ。

廊下から掲示板へ。

掲示板から階段へ。

そして、戻らなかった方向を、広い空白のまま残した。

外へ出ると、夜気が頬へ冷たく触れた。校庭の落ち葉は風に押され、フェンスの根元へ集まっている。足場の黒い骨組みと、養生資材を囲う白いシートだけが、街灯の下に浮かんでいた。

私はそこへ目を向けた。

シートの端が、ひとつだけ外れている。

その向こうに、木材と古い金具が積まれていた。今すぐ確認できる距離ではない。けれど、先ほどの足跡が向かっていた方向と重なっている。

「先生。あそこを見てもいいですか」

「今日はもう遅いわ」

「明日、確認します」

「ええ。久我山さんにも立ち会ってもらいましょう」

先生は鍵束を鳴らし、校舎の入口を施錠した。扉の金属が噛み合う音が、夜の校庭に乾いて響く。

私は振り返り、美術棟を見上げた。

養生シートに覆われた窓は、もう外の色を返さない。白い膜の内側に、誰かの視線だけが残っているように見えた。見つめ返そうとしても、こちらの姿は映らない。

それでも、足跡は残っていた。

戻れなかった人のために。

戻ろうとして、向きを変えた人のために。

そして、これからその向きを読み取る人のために。

私はポケットの中で、紙の端をこすった。乾いた繊維が指先へ触れた。

明日、もう一度ここへ来る。

誰が歩いたのかを決めつけるためではなく、誰かが歩いたという事実を、今度こそ消さないために。

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