5話 第二稿の熱、紙に残る焦り

視聴覚室の扉を閉めると、廊下の雨音が一枚の板を隔てた向こうへ退いた。

完全に消えたわけではない。古い窓枠を叩く雨の粒が、細かな金属音になって残っている。けれど、さっきまで校舎全体を包んでいたざわめきは、机を三つ並べただけの部屋の中では別の形をしていた。椅子を引く音。誰かの靴底が床を擦る音。ガムテープの端を探す爪の音。黙って台本をめくる音。

音が多いのに、息苦しいほど狭い。

私は扉のそばで立ち止まった。濡れた靴から落ちた水滴が、古い木の床に小さな丸を作っている。

「靴、拭いて」

榊原先生が言った。

黒縁の眼鏡の奥から向けられた視線は、私ではなく床を見ていた。舞台に立つ前に、まず床を汚すなということらしい。

「はい」

結衣がすぐ、丸めた雑巾を投げてよこした。私は慌てて受け取り、しゃがみ込む。雑巾には洗剤と、少しだけカビのような匂いが染みついていた。靴底を拭くたび、舞台板の乾いた感触が布越しに伝わってくる。

「そこまで丁寧にしなくていい。時間ないから」

「でも、濡れてるし」

「分かってる。だから拭いてるんでしょ」

「……はい」

「返事は一回でいい」

結衣はそう言いながら、私の横を通り過ぎた。片手で台本を押さえ、もう片方の手で机の位置を数センチずつ直していく。机の脚が床を擦るたび、き、と乾いた音がした。

彼女は止まらない。机を直し、椅子を壁へ寄せ、床に貼られた白いテープの端を押さえ、照明コードを足で脇へ避ける。その動きには迷いがなかった。何かが足りないとき、結衣は足りないものを探すのではなく、足りないまま動く形を作る。

私は雑巾を置き、立ち上がった。

視聴覚室の中央には、白いテープで四角く囲まれた場所があった。机を舞台の壁に見立て、中央のテープが立ち位置を示している。正式な舞台より狭い。客席もない。けれど、そこへ足を踏み入れるだけで、部屋の視線が一か所に集まるようにできていた。

「中央」

結衣が言った。

「私が?」

「代役なんだから、あんた以外に誰がいるの」

私は一歩だけ前へ出た。テープの白線が、濡れた靴の先に近づいてくる。

「その線、踏んで」

「踏むの?」

「立ち位置。踏んだら、そこが二場の入口。客席から見て右。舞台上の右と客席から見た右が違うのは知ってる?」

「……たぶん」

「たぶんで立つと、袖に消える。はい、ここ」

結衣の指が、私の靴の先を軽く押した。

ほんの一瞬、靴のつま先と彼女の指が触れた。結衣はすぐに手を引いたが、近くで聞こえた彼女の息が、私の耳に残った。早い。焦っているのだろう。私よりずっと場数を踏んでいるはずなのに、その呼吸は整っていなかった。

「台本、開いて」

私は第二稿を開いた。

ページをめくると、湿気を吸った紙が指にまとわりついた。蛍光ペンの色が、雨に滲んだ古い地図のように重なっている。黄色の線の上に桃色の線、その脇に青い矢印。余白には細い字で、「ここで息」「視線だけ先」「一拍待つ」「蓮、笑いすぎ」と書かれていた。

最後の書き込みだけ、藤崎蓮の字なのかもしれない。

その名前を目にしただけで、胸の奥が少し狭くなった。

藤崎蓮。今日の朝まで、舞台の中央に立っていた人。廊下ですれ違えば誰にでも先に笑いかけ、後輩の肩を軽く叩き、場の空気を明るくする人。昨日、私は演劇部の公開稽古を、教室の後ろから見ていた。蓮は何もしていない時間でさえ、舞台の中心にいた。

私は、その立ち方を覚えていた。

覚えていたから、ここに連れてこられた。

それが、褒められているようには思えなかった。見ているだけだった私の視線が、こんな場所で使い道を持つとは考えたことがない。

「役名」

先生が言った。

台本を見た。表紙には劇の題名と、出演者の名前が並んでいる。藤崎蓮の名前だけが、黒いペンで何度もなぞられていた。その下に、代役の欄が空白のまま残っている。

「……まだ覚えてません」

「役名は」

先生は同じことを繰り返した。

私はページをめくり、蓮が演じていた役の名前を探した。

「ユウ」

「声が小さい」

「ユウ、です」

「聞こえるように」

私は台本を持ち直した。指先が紙の端を押しつぶす。

「ユウです」

先生は小さくうなずいた。

褒められたわけではない。認められたわけでもない。それでも、胸の奥に張りついていたものが、ほんの少しだけ剥がれた。

結衣が机の上へクリップボードを置いた。

「よし。じゃあ一場から確認する。一場は立ち位置だけ。台詞は読めなくてもいい。まず動線」

「台詞、読まなくていいの?」

「今は。台詞を覚えても、入口から出られなかったら全部無駄だから」

結衣は白いテープの角を指差した。

「ここがユウの最初の位置。雨の音が止まって、照明が入る。二拍置いてから前へ。前へ出るとき、客席を見ない。まだ見ない。二場まで客席は敵。蓮はそこを、まあ、勝手に見てたけど」

「勝手に?」

「見てた。あいつは見られると、見返すから」

結衣はそう言ってから、ほんの少しだけ口を閉じた。

蓮のいない場所を見ているようだった。

私は台本の余白へ目を落とした。蓮の書き込みらしい丸い字があった。

《客席は敵じゃない。最初だけ、そう思っておく》

その一文は、ほかの指示とは違っていた。立つ場所も、息を入れる場所も書かれていない。ただ、役を演じる人間へ向けた言葉のように残っている。

「それ、蓮の字」

結衣が私の視線に気づいた。

「たぶん」

「たぶん?」

「自分の字くらい分かるでしょ」

「蓮は、台本の余白にいろいろ書くから。三年生の台本は、全員の字が混ざってる。こっちが演技の直しで、こっちは音響の合図。赤い丸は照明。たまに蓮が描いた変な顔もある」

結衣はページの端をめくった。そこには、丸い頭と細い手足だけの人物が描かれていた。口が大きく開いている。

「これ、何?」

「蓮」

「自画像?」

「たぶん、先生」

榊原先生がこちらを見た。

「違う」

短い答えだった。

結衣が初めて、声を立てて笑った。小さな笑いだったが、さっきまでの張り詰めた空気がわずかにほどけた。

私は笑えなかった。けれど、口元が少し動いた。

それを結衣が見ていた。

「今の顔、使える」

「何に?」

「笑う役じゃないけど、笑いそうで笑えない顔。そういうの、蓮にはなかった」

蓮にはなかった。

その言葉は、褒め言葉なのか、足りないところを指摘されたのか分からなかった。私はまた台本へ目を落とした。書き込みだらけの紙が、急に他人の皮膚のように思えてくる。何人もの指が触れ、何度も折られ、消され、書き直されて、それでも捨てられずに残っている。

「私が、これをやるの?」

口にしてから、遅すぎる確認だと気づいた。

結衣はクリップボードを抱え直した。焦ると、腕を組む。今も片腕で台本を押さえ、もう片方の手を肘へ置いていた。

「そう」

「蓮が戻れないから?」

「そう」

「蓮が戻れたら、私はいらない?」

結衣は答えなかった。

視聴覚室の窓を雨が叩いた。誰かが壁際で衣装のボタンを留め直している。針が布を抜ける、細い音が続いていた。

「戻れたら、蓮がやる」

「じゃあ、私は本当に代わりでしかない」

「今はそう」

言い方が冷たくて、胸の内側を指で引っかかれたようだった。

結衣はそのまま続けた。

「でも、代わりって、空っぽの場所に誰でも入れるって意味じゃない。蓮が抜けた穴の形を見て、今いる人間で埋めるってこと。誰でもいいなら、私がやってる。台詞を覚える時間はないけど、舞台監督でも立てるくらいの役なら、私がやってる。でも、この役は私がやると次の進行が止まる。だから、あんたに頼んでる」

「頼んでるって言いながら、もう連れてきてるけど」

「連れてきた。頼む前に逃げられたら困るから」

「それ、頼むって言わないよ」

「じゃあ、何て言えばいいの。『あなたにしかできません』って言えば満足? 私はそういう嘘、嫌い。あんたにしかできないとは言ってない。今ここにいて、見たものを覚えていて、まだ帰っていないから頼んでる。理由なんて、それで十分でしょ」

結衣の声は鋭かった。

でも、最後の語尾だけ少し震えていた。

彼女は人に期待を口にするのが怖いのだと思った。期待したあとで裏切られるのが怖い。だから、できるとは言わず、使えると言う。信じているとは言わず、今いるから頼むと言う。

私はそのことを、なぜか分かってしまった。

分かってしまったから、余計に断りにくかった。

「……台詞、全部覚えないと駄目?」

「全部。無理なら、まず一場。次に二場。最後まで行けたら、また最初から」

「本番は明日だよ」

「知ってる。だから今夜やる」

「何時まで?」

「分からない」

「母が心配する」

「連絡すれば」

「夕飯もまだ」

「菓子パンならある」

結衣は自分の鞄から、潰れた袋を取り出した。袋の角から、甘いクリームの匂いがした。

「食べる?」

「それ、結衣のじゃないの」

「半分なら」

「半分にする気ある?」

「ないけど、あんたが食べるなら考える」

「それは半分じゃない」

「うるさい。今、食べないと倒れる」

結衣は袋を私へ押しつけかけ、途中で止めた。代わりに、私の鞄を見た。

「母親、何か入れてる?」

「タオル」

「食べ物は?」

「ない」

「本当に帰宅部?」

「帰宅部に食べ物の条件あるの?」

「ないけど、普通は文化祭前日に何か持ってるでしょ」

「普通が分からない」

「……そういうところ」

結衣はため息をつき、菓子パンの袋を開けた。中にはクリームパンがひとつだけ入っていた。彼女はそれを二つに裂こうとして、クリームが片側へ偏った。

「下手」

「食べるなら黙って」

「それ、結衣の夜食じゃないの」

「だから半分って言ってる」

「結衣がほとんど持ってる」

「じゃあ、あんたが少ない方」

「理不尽」

「舞台は理不尽なことが起きる場所なの」

「今のは舞台じゃなくてクリームパンの話」

隣で、衣装係らしい女子が吹き出した。

「結衣、そこまでして食べさせるの、彼女だけじゃん」

「黙ってボタン縫って」

「はいはい。代役さん、頑張ってね」

私は「はい」と答えかけた。けれど、声が途中でつかえた。頑張る、という言葉に返事をするのは難しい。頑張ればできると決まっているみたいで、できなかったときの逃げ場がなくなる。

結衣が私の手からクリームパンの小さい方を取り上げ、さらに二つに分けた。

「一口でいい」

「結衣が食べれば」

「私はもう食べた」

「嘘」

「嘘じゃない。朝」

「それは食べたって言わない」

「食べた。だからいい」

結衣は私の手のひらへ、クリームパンの欠片を置いた。指先に砂糖の粉がついている。私はそれを見て、なぜか言われるまま口へ運んだ。

甘かった。少し乾いていて、クリームは冷たかった。

結衣は残りを自分の口へ押し込み、すぐに台本を開いた。

「食べた。立つ」

「まだ飲み込んでない」

「飲み込んでから」

「早くない?」

「遅いよりいい」

私は喉を動かした。甘さが残っている。緊張すると何も食べられなくなると思っていたのに、胃へ落ちたものが妙に現実的だった。私はここにいる。舞台の中央に立たされ、他人の台本を持ち、クリームパンを食べている。

母から携帯電話が震えた。

《夕飯、冷めるから先に食べなさい》

画面を見ていると、結衣が横から覗いた。

「今度は何」

「夕飯」

「食べたじゃん」

「これじゃなくて」

「これも食事」

「母に言ったら怒られる」

「じゃあ言わなきゃいい」

「母はそういうの、返事の速さで分かる」

「怖いね」

「結衣も人の呼吸が分かるでしょ」

「私は呼吸だけ。お母さんは生活全部見るから怖い」

その言葉を、結衣は軽く言った。けれど、母からのメッセージを読んでいる間、彼女の視線が私の顔から一度も離れなかった。

私は返信を打った。

《食べた。まだ学校にいる。終わったら連絡する》

送信してから、少し考えて付け足す。

《傘はある》

母からすぐに返事が来た。

《タオル使いなさい。濡れたままにしないで》

私は鞄の中のタオルを思い出した。朝、母が何も言わずに入れていた薄いタオル。いつもなら使うこともなく、洗濯物の中へ戻るだけのもの。

「現実的」

結衣が言った。

「母が?」

「そう。舞台で何人倒れても、タオルの心配をする」

「倒れたのは藤崎だけ」

「そういう細かい訂正、今はいらない」

結衣は笑わなかったが、目元が少し緩んだ。

榊原先生が机を一度叩いた。

「始める」

空気が戻った。

結衣は相手役の位置へ移動し、台本を片手で持った。私を見る目が、さっきまでとは違う。友達でも、帰宅部の生徒でもない。舞台監督として、私が次にどこでつまずくかを測っている。

「一場、冒頭。蓮の録音を流す」

照明係の男子がスマートフォンを机へ置いた。

再生ボタンが押される。

藤崎蓮の声が、湿った視聴覚室へ流れ込んだ。

「雨が止むまで、ここにいる」

明るく、滑らかで、声の終わりに余裕がある。録音なのに、その声には立っている人間の重さがあった。私は思わず、部屋のどこかに蓮がいるような気がして、顔を上げた。

「見るな」

結衣が言った。

「え?」

「蓮を探さない。声は使う。でも、本人を探すな」

「そんなの、無理」

「無理でもやる。今からあんたが立つ場所に、蓮の亡霊を置いたら、あんたは一生そこから動けない」

結衣の言葉に、部屋の何人かが黙った。

「蓮の声を聞くと、蓮みたいにしなきゃって思うでしょ。でも、蓮はもう舞台にいない。いない人の立ち方を真似しても、足元がずれるだけ。今ここにいるのはあんたで、あんたの息しか使えない。だったら、それで合わせるしかない」

「合わせられなかったら?」

「合わせられるまでやる」

「ずっと?」

「ずっと」

「結衣は、そうやって全部自分でやってきたの?」

聞いた瞬間、結衣の指が止まった。

彼女は髪を耳へかけ直した。今夜で何度目か分からない。

「何の話」

「人に頼むより、自分でやるってこと」

「今、あんたに頼んでる」

「頼んでるというより、押しつけてる」

「同じじゃない」

「違うよ」

私は自分でも驚くほど、言葉が続いた。

「結衣は、私ができるかどうかを聞く前に、できる形にしようとしてる。私が失敗したら困るから。舞台が止まるから。三年生の最後だから。でも、私が怖いかどうかは、後回しにしてる」

結衣は黙っていた。

私は言いすぎたと思った。言葉を飲み込もうとしたが、もう遅かった。こういうふうに、普段は言えないことが、追い詰められると急に口から出る。

「私、失敗するのが怖い。笑われるのも嫌。名前を覚えられてない人間が、いきなり主役になって、台詞を噛んで、立ち位置を間違えて、みんなの時間を無駄にするのが怖い。だから、帰りたい。帰れば、明日の舞台がどうなっても私には関係ないって言える。でも、そうしたら、私はまた見てるだけになる。何かが起きても、自分には関係ないって顔をして、あとでそれを正しい判断だったことにする。そういうのが、今は一番嫌」

声を張ったつもりはなかった。

それでも、最後の言葉は部屋の隅まで届いた。

誰も笑わなかった。

結衣は、クリップボードから手を離した。小柄な身体が、ほんの少しだけ沈んだように見えた。

「……そういうこと、もっと早く言えば」

「言えないから今言ってる」

「なら、今からは言って。黙って沈まれると、こっちは拾えない」

結衣は私の手元の台本へ目を落とした。

「私だって、全部やりたいわけじゃない。自分が全部やらないと終わらないと思ってるだけ。前に、任せた仕事が間に合わなくて、最後に私が全部片づけたことがある。あのときは、任せた相手を責めるより、自分が最初からやればよかったって思った。だから、誰かに頼むのが遅くなる。頼んで、間に合わなかったら、その責任まで私が取ることになるから」

「じゃあ、私が間に合わなかったら?」

「私が直す」

「それでいいの?」

「よくない」

結衣は即答した。

「よくないけど、今夜はそれしかない。あんたが失敗しないようにするんじゃなくて、失敗しても止まらないようにする。私が作るのは、そういう舞台。だから、あんたは失敗しない努力をしなくていい。失敗したあと、戻ってくる努力をして」

結衣の声から、いつもの刺が消えていた。

その代わり、隠していた疲れがにじんでいた。

榊原先生が眼鏡を押し上げた。

「十分」

結衣が振り返る。

「何がですか」

「話は終わり。立て」

先生は私を見た。

「今の言葉を、舞台で使え」

「どうやって」

「分からないなら、やってみろ」

先生はそれ以上言わなかった。

私はテープの四角の中へ戻った。足元の白線が、さっきより近く感じる。録音の中の蓮が、もう一度台詞を言う。

雨が止むまで、ここにいる。

私はその声のあとに、ひとつ息を置いた。

「……雨が止むまで、ここにいる」

声はまだ細い。けれど、さっきよりわずかに低く、床へ届いた。

結衣が次の台詞を返す。

「止まない雨もある」

私は台本を見た。次の行を探す。その一瞬、結衣の呼吸が浅くなった。次の台詞を待っている。私の返事が遅れれば、彼女も進めない。

私はいつも、人の口元ではなく手元を見る。結衣の指が台本の端を押さえている。親指が一度、二度と動いた。焦っている。でも、待っている。

私は台詞を口にした。

「それでも、止むまでここにいる」

結衣の目が、ほんの少しだけ開いた。

「……今の、もう一回」

「駄目だった?」

「逆。今の間、変だった」

「変なのに?」

「変だから。蓮なら、もっと早く言う。あんたは遅れた。でも、その遅れで、ユウが本当に考えてるみたいに見えた」

「それ、褒めてる?」

「褒めてない。使えるって言ってる」

「同じじゃない?」

「違う」

結衣の耳が赤くなった。

私は初めて、彼女を少しだけ別の人間として見た。怒っているように見える声の奥に、舞台を壊したくない必死さがある。誰かを信じるのが下手で、だから先に手を伸ばしてしまう。私の襟元を直したときと同じ手つきで、彼女は机の位置を直し、台本の端を押さえる。

その指先が、少しだけきれいに見えた。

「もう一回」

私は言った。

結衣が顔を上げた。

「何が」

「さっきの場面。もう一回やる」

結衣は一瞬、黙った。

それから、いつものように髪を耳へかけ直した。

「言われなくても、そのつもり」

雨はまだ降っていた。

けれど、視聴覚室の中央で、私の靴はもう濡れていなかった。

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