第2話 第二稿の重さ

視聴覚室の扉を閉めると、廊下の雨音が一枚の板を隔てた向こうへ退いた。
完全に消えたわけではない。古い窓枠を叩く雨の粒が、細かな金属音になって残っている。けれど、さっきまで校舎全体を包んでいたざわめきは、机を三つ並べただけの部屋の中では別の形をしていた。椅子を引く音。誰かの靴底が床を擦る音。ガムテープの端を探す爪の音。黙って台本をめくる音。
音が多いのに、息苦しいほど狭い。
私は扉のそばで立ち止まった。濡れた靴から落ちた水滴が、古い木の床に小さな丸を作っている。
「靴、拭いて」
榊原先生が言った。
黒縁の眼鏡の奥から向けられた視線は、私ではなく床を見ていた。舞台に立つ前に、まず床を汚すなということらしい。
「はい」
結衣がすぐ、丸めた雑巾を投げてよこした。私は慌てて受け取り、しゃがみ込む。雑巾には洗剤と、少しだけカビのような匂いが染みついていた。靴底を拭くたび、舞台板の乾いた感触が布越しに伝わってくる。
「そこまで丁寧にしなくていい。時間ないから」
「でも、濡れてるし」
「分かってる。だから拭いてるんでしょ」
「……はい」
「返事は一回でいい」
結衣はそう言いながら、私の横を通り過ぎた。片手で台本を押さえ、もう片方の手で机の位置を数センチずつ直していく。机の脚が床を擦るたび、き、と乾いた音がした。
彼女は止まらない。机を直し、椅子を壁へ寄せ、床に貼られた白いテープの端を押さえ、照明コードを足で脇へ避ける。その動きには迷いがなかった。何かが足りないとき、結衣は足りないものを探すのではなく、足りないまま動く形を作る。
私は雑巾を置き、立ち上がった。
視聴覚室の中央には、白いテープで四角く囲まれた場所があった。机を舞台の壁に見立て、中央のテープが立ち位置を示している。正式な舞台より狭い。客席もない。けれど、そこへ足を踏み入れるだけで、部屋の視線が一か所に集まるようにできていた。
「中央」
結衣が言った。
「私が?」
「代役なんだから、あんた以外に誰がいるの」
私は一歩だけ前へ出た。テープの白線が、濡れた靴の先に近づいてくる。
「その線、踏んで」
「踏むの?」
「立ち位置。踏んだら、そこが二場の入口。客席から見て右。舞台上の右と客席から見た右が違うのは知ってる?」
「……たぶん」
「たぶんで立つと、袖に消える。はい、ここ」
結衣の指が、私の靴の先を軽く押した。
ほんの一瞬、靴のつま先と彼女の指が触れた。結衣はすぐに手を引いたが、近くで聞こえた彼女の息が、私の耳に残った。早い。焦っているのだろう。私よりずっと場数を踏んでいるはずなのに、その呼吸は整っていなかった。
「台本、開いて」
私は第二稿を開いた。
ページをめくると、湿気を吸った紙が指にまとわりついた。蛍光ペンの色が、雨に滲んだ古い地図のように重なっている。黄色の線の上に桃色の線、その脇に青い矢印。余白には、細い字で「ここで息」「視線だけ先」「一拍待つ」「蓮、笑いすぎ」と書かれていた。
最後の書き込みだけ、藤崎蓮の字なのかもしれない。
その名前を目にしただけで、胸の奥が少し狭くなった。
藤崎蓮。今日の朝まで、舞台の中央に立っていた人。廊下ですれ違えば誰にでも先に笑いかけ、後輩の肩を軽く叩き、場の空気を明るくする人。昨日、私は演劇部の公開稽古を、教室の後ろから見ていた。蓮は何もしていない時間でさえ、舞台の中心にいた。
私は、その立ち方を覚えていた。
覚えていたから、ここに連れてこられた。
それが、褒められているようには思えなかった。見ているだけだった私の視線が、こんな場所で使い道を持つとは考えたことがない。
「役名」
先生が言った。
台本を見た。表紙には劇の題名と、出演者の名前が並んでいる。藤崎蓮の名前だけが、黒いペンで何度もなぞられていた。その下に、代役の欄が空白のまま残っている。
「……まだ覚えてません」
「役名は」
先生は同じことを繰り返した。
私はページをめくり、蓮が演じていた役の名前を探した。
「ユウ」
「声が小さい」
「ユウ、です」
「聞こえるように」
私は台本を持ち直した。指先が紙の端を押しつぶす。
「ユウです」
先生は小さくうなずいた。
褒められたわけではない。認められたわけでもない。それでも、胸の奥に張りついていたものが、ほんの少しだけ剥がれた。
結衣が机の上へクリップボードを置いた。
「よし。じゃあ一場から確認する。一場は立ち位置だけ。台詞は読めなくてもいい。まず動線」
「台詞、読まなくていいの?」
「今は。台詞を覚えても、入口から出られなかったら全部無駄だから」
結衣は白いテープの角を指差した。
「ここがユウの最初の位置。雨の音が止まって、照明が入る。二拍置いてから前へ。前へ出るとき、客席を見ない。まだ見ない。二場まで客席は敵。蓮はそこを、まあ、勝手に見てたけど」
「勝手に?」
「見てた。あいつは見られると、見返すから」
結衣はそう言ってから、ほんの少しだけ口を閉じた。
蓮のいない場所を見ているようだった。
私は台本の余白へ目を落とした。蓮の書き込みらしい丸い字があった。
《客席は敵じゃない。最初だけ、そう思っておく》
その一文は、ほかの指示とは違っていた。立つ場所も、息を入れる場所も書かれていない。ただ、役を演じる人間へ向けた言葉のように残っている。
「それ、蓮の字」
結衣が私の視線に気づいた。
「たぶん」
「たぶん?」
「自分の字くらい分かるでしょ」
「蓮は、台本の余白にいろいろ書くから。三年生の台本は、全員の字が混ざってる。こっちが演技の直しで、こっちは音響の合図。赤い丸は照明。たまに蓮が描いた変な顔もある」
結衣はページの端をめくった。そこには、丸い頭と細い手足だけの人物が描かれていた。口が大きく開いている。
「これ、何?」
「蓮」
「自画像?」
「たぶん、先生」
榊原先生がこちらを見た。
「違う」
短い答えだった。
結衣が初めて、声を立てて笑った。小さな笑いだったが、さっきまでの張り詰めた空気がわずかにほどけた。
私は笑えなかった。けれど、口元が少し動いた。
それを結衣が見ていた。
「今の顔、使える」
「何に?」
「笑う役じゃないけど、笑いそうで笑えない顔。そういうの、蓮にはなかった」
蓮にはなかった。
その言葉は、褒め言葉なのか、足りないところを指摘されたのか分からなかった。私はまた台本へ目を落とした。書き込みだらけの紙が、急に他人の皮膚のように思えてくる。何人もの指が触れ、何度も折られ、消され、書き直されて、それでも捨てられずに残っている。
「私が、これをやるの?」
口にしてから、遅すぎる確認だと気づいた。
結衣はクリップボードを抱え直した。焦ると、腕を組む。今も片腕で台本を押さえ、もう片方の手を肘へ置いていた。
「そう」
「蓮が戻れないから?」
「そう」
「蓮が戻れたら、私はいらない?」
結衣は答えなかった。
視聴覚室の窓を雨が叩いた。誰かが壁際で衣装のボタンを留め直している。針が布を抜ける、細い音が続いていた。
「戻れたら、蓮がやる」
「じゃあ、私は本当に代わりでしかない」
「今はそう」
言い方が冷たくて、胸の内側を指で引っかかれたようだった。
結衣はそのまま続けた。
「でも、代わりって、空っぽの場所に誰でも入れるって意味じゃない。蓮が抜けた穴の形を見て、今いる人間で埋めるってこと。誰でもいいなら、私がやってる。台詞を覚える時間はないけど、舞台監督でも立てるくらいの役なら、私がやってる。でも、この役は私がやると次の進行が止まる。だから、あんたに頼んでる」
「頼んでるって言いながら、もう連れてきてるけど」
「連れてきた。頼む前に逃げられたら困るから」
「それ、頼むって言わないよ」
「じゃあ、何て言えばいいの。『あなたにしかできません』って言えば満足? 私はそういう嘘、嫌い。あんたにしかできないとは言ってない。今ここにいて、見たものを覚えていて、まだ帰っていないから頼んでる。理由なんて、それで十分でしょ」
結衣の声は鋭かった。
でも、最後の語尾だけ少し震えていた。
彼女は人に期待を口にするのが怖いのだと思った。期待したあとで裏切られるのが怖い。だから、できるとは言わず、使えると言う。信じているとは言わず、今いるから頼むと言う。
私はそのことを、なぜか分かってしまった。
分かってしまったから、余計に断りにくかった。
「……台詞、全部覚えないと駄目?」
「全部。無理なら、まず一場。次に二場。最後まで行けたら、また最初から」
「本番は明日だよ」
「知ってる。だから今夜やる」
「何時まで?」
「分からない」
「母が心配する」
「連絡すれば」
「夕飯もまだ」
「菓子パンならある」
結衣は自分の鞄から、潰れた袋を取り出した。袋の角から、甘いクリームの匂いがした。
「食べる?」
「それ、結衣のじゃないの」
「半分なら」
「半分にする気ある?」
「ないけど、あんたが食べるなら考える」
「それは半分じゃない」
「うるさい。今、食べないと倒れる」
結衣は袋を私へ押しつけかけ、途中で止めた。代わりに、私の鞄を見た。
「母親、何か入れてる?」
「タオル」
「食べ物は?」
「ない」
「本当に帰宅部?」
「帰宅部に食べ物の条件あるの?」
「ないけど、普通は文化祭前日に何か持ってるでしょ」
「普通が分からない」
「……そういうところ」
結衣はため息をつき、菓子パンの袋を開けた。中にはクリームパンがひとつだけ入っていた。彼女はそれを二つに裂こうとして、クリームが片側へ偏った。
「下手」
「食べるなら黙って」
「それ、結衣の夜食じゃないの」
「だから半分って言ってる」
「結衣がほとんど持ってる」
「じゃあ、あんたが少ない方」
「理不尽」
「舞台は理不尽なことが起きる場所なの」
「今のは舞台じゃなくてクリームパンの話」
隣で、衣装係らしい女子が吹き出した。
「結衣、そこまでして食べさせるの、彼女だけじゃん」
「黙ってボタン縫って」
「はいはい。代役さん、頑張ってね」
私は「はい」と答えかけた。けれど、声が途中でつかえた。頑張る、という言葉に返事をするのは難しい。頑張ればできると決まっているみたいで、できなかったときの逃げ場がなくなる。
結衣が私の手からクリームパンの小さい方を取り上げ、さらに二つに分けた。
「一口でいい」
「結衣が食べれば」
「私はもう食べた」
「嘘」
「嘘じゃない。朝」
「それは食べたって言わない」
「食べた。だからいい」
結衣は私の手のひらへ、クリームパンの欠片を置いた。指先に砂糖の粉がついている。私はそれを見て、なぜか言われるまま口へ運んだ。
甘かった。少し乾いていて、クリームは冷たかった。
結衣は残りを自分の口へ押し込み、すぐに台本を開いた。
「食べた。立つ」
「まだ飲み込んでない」
「飲み込んでから」
「早くない?」
「遅いよりいい」
私は喉を動かした。甘さが残っている。緊張すると何も食べられなくなると思っていたのに、胃へ落ちたものが妙に現実的だった。私はここにいる。舞台の中央に立たされ、他人の台本を持ち、クリームパンを食べている。
母から携帯電話が震えた。
《夕飯、冷めるから先に食べなさい》
画面を見ていると、結衣が横から覗いた。
「今度は何」
「夕飯」
「食べたじゃん」
「これじゃなくて」
「これも食事」
「母に言ったら怒られる」
「じゃあ言わなきゃいい」
「母はそういうの、返事の速さで分かる」
「怖いね」
「結衣も人の呼吸が分かるでしょ」
「私は呼吸だけ。お母さんは生活全部見るから怖い」
その言葉を、結衣は軽く言った。けれど、母からのメッセージを読んでいる間、彼女の視線が私の顔から一度も離れなかった。
私は返信を打った。
《食べた。まだ学校にいる。終わったら連絡する》
送信してから、少し考えて付け足す。
《傘はある》
母からすぐに返事が来た。
《タオル使いなさい。濡れたままにしないで》
私は鞄の中のタオルを思い出した。朝、母が何も言わずに入れていた薄いタオル。いつもなら使うこともなく、洗濯物の中へ戻るだけのもの。
「現実的」
結衣が言った。
「母が?」
「そう。舞台で何人倒れても、タオルの心配をする」
「倒れたのは藤崎だけ」
「そういう細かい訂正、今はいらない」
結衣は笑わなかったが、目元が少し緩んだ。
榊原先生が机を一度叩いた。
「始める」
空気が戻った。
結衣は相手役の位置へ移動し、台本を片手で持った。私を見る目が、さっきまでとは違う。友達でも、帰宅部の生徒でもない。舞台監督として、私が次にどこでつまずくかを測っている。
「一場、冒頭。蓮の録音を流す」
照明係の男子がスマートフォンを机へ置いた。
再生ボタンが押される。
藤崎蓮の声が、湿った視聴覚室へ流れ込んだ。
「雨が止むまで、ここにいる」
明るく、滑らかで、声の終わりに余裕がある。録音なのに、その声には立っている人間の重さがあった。私は思わず、部屋のどこかに蓮がいるような気がして、顔を上げた。
「見るな」
結衣が言った。
「え?」
「蓮を探さない。声は使う。でも、本人を探すな」
「そんなの、無理」
「無理でもやる。今からあんたが立つ場所に、蓮の亡霊を置いたら、あんたは一生そこから動けない」
結衣の言葉に、部屋の何人かが黙った。
「蓮の声を聞くと、蓮みたいにしなきゃって思うでしょ。でも、蓮はもう舞台にいない。いない人の立ち方を真似しても、足元がずれるだけ。今ここにいるのはあんたで、あんたの息しか使えない。だったら、それで合わせるしかない」
「合わせられなかったら?」
「合わせられるまでやる」
「ずっと?」
「ずっと」
「結衣は、そうやって全部自分でやってきたの?」
聞いた瞬間、結衣の指が止まった。
彼女は髪を耳へかけ直した。今夜で何度目か分からない。
「何の話」
「人に頼むより、自分でやるってこと」
「今、あんたに頼んでる」
「頼んでるというより、押しつけてる」
「同じじゃない」
「違うよ」
私は自分でも驚くほど、言葉が続いた。
「結衣は、私ができるかどうかを聞く前に、できる形にしようとしてる。私が失敗したら困るから。舞台が止まるから。三年生の最後だから。でも、私が怖いかどうかは、後回しにしてる」
結衣は黙っていた。
私は言いすぎたと思った。言葉を飲み込もうとしたが、もう遅かった。こういうふうに、普段は言えないことが、追い詰められると急に口から出る。
「私、失敗するのが怖い。笑われるのも嫌。名前を覚えられてない人間が、いきなり主役になって、台詞を噛んで、立ち位置を間違えて、みんなの時間を無駄にするのが怖い。だから、帰りたい。帰れば、明日の舞台がどうなっても私には関係ないって言える。でも、そうしたら、私はまた見てるだけになる。何かが起きても、自分には関係ないって顔をして、あとでそれを正しい判断だったことにする。そういうのが、今は一番嫌」
声を張ったつもりはなかった。
それでも、最後の言葉は部屋の隅まで届いた。
誰も笑わなかった。
結衣は、クリップボードから手を離した。小柄な身体が、ほんの少しだけ沈んだように見えた。
「……そういうこと、もっと早く言えば」
「言えないから今言ってる」
「なら、今からは言って。黙って沈まれると、こっちは拾えない」
結衣は私の手元の台本へ目を落とした。
「私だって、全部やりたいわけじゃない。自分が全部やらないと終わらないと思ってるだけ。前に、任せた仕事が間に合わなくて、最後に私が全部片づけたことがある。あのときは、任せた相手を責めるより、自分が最初からやればよかったって思った。だから、誰かに頼むのが遅くなる。頼んで、間に合わなかったら、その責任まで私が取ることになるから」
「じゃあ、私が間に合わなかったら?」
「私が直す」
「それでいいの?」
「よくない」
結衣は即答した。
「よくないけど、今夜はそれしかない。あんたが失敗しないようにするんじゃなくて、失敗しても止まらないようにする。私が作るのは、そういう舞台。だから、あんたは失敗しない努力をしなくていい。失敗したあと、戻ってくる努力をして」
結衣の声から、いつもの刺が消えていた。
その代わり、隠していた疲れがにじんでいた。
榊原先生が眼鏡を押し上げた。
「十分」
結衣が振り返る。
「何がですか」
「話は終わり。立て」
先生は私を見た。
「今の言葉を、舞台で使え」
「どうやって」
「分からないなら、やってみろ」
先生はそれ以上言わなかった。
私はテープの四角の中へ戻った。足元の白線が、さっきより近く感じる。録音の中の蓮が、もう一度台詞を言う。
雨が止むまで、ここにいる。
私はその声のあとに、ひとつ息を置いた。
「……雨が止むまで、ここにいる」
声はまだ細い。けれど、さっきよりわずかに低く、床へ届いた。
結衣が次の台詞を返す。
「止まない雨もある」
私は台本を見た。次の行を探す。その一瞬、結衣の呼吸が浅くなった。次の台詞を待っている。私の返事が遅れれば、彼女も進めない。
私はいつも、人の口元ではなく手元を見る。結衣の指が台本の端を押さえている。親指が一度、二度と動いた。焦っている。でも、待っている。
私は台詞を口にした。
「それでも、止むまでここにいる」
結衣の目が、ほんの少しだけ開いた。
「……今の、もう一回」
「駄目だった?」
「逆。今の間、変だった」
「変なのに?」
「変だから。蓮なら、もっと早く言う。あんたは遅れた。でも、その遅れで、ユウが本当に考えてるみたいに見えた」
「それ、褒めてる?」
「褒めてない。使えるって言ってる」
「同じじゃない?」
「違う」
結衣の耳が赤くなった。
私は初めて、彼女を少しだけ別の人間として見た。怒っているように見える声の奥に、舞台を壊したくない必死さがある。誰かを信じるのが下手で、だから先に手を伸ばしてしまう。私の襟元を直したときと同じ手つきで、彼女は机の位置を直し、台本の端を押さえる。
その指先が、少しだけきれいに見えた。
「もう一回」
私は言った。
結衣が顔を上げた。
「何が」
「さっきの場面。もう一回やる」
結衣は一瞬、黙った。
それから、いつものように髪を耳へかけ直した。
「言われなくても、そのつもり」
雨はまだ降っていた。
けれど、視聴覚室の中央で、私の靴はもう濡れていなかった。
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